COLUMN DIRECTOR

vol.02
人間らしく服をつくる人たち

人間らしく服をつくる人たち

Lisa Yamai

山井梨沙

(Snow Peak Apparel デザイナー)

30歳の頃、いつも良いバイブスをくれる福岡・今泉にあるDICE&DICEの吉田さんが「めちゃくちゃヤバい兄弟がいるので紹介します」と紹介してくれたのが、the Inoue Brothersだった。うちの展示会に来てくれて会った瞬間、文字通りヤバい兄弟ということが速攻で分かった。なんというか、魂レベルがやたらと高い人たちだった。ふたりとも、スノーピークの服を着てくれていた。

井上兄弟はデンマーク生まれデンマーク育ちの日系デンマーク人。兄・聡さんはコペンハーゲンで暮らし、弟・清史さんはロンドンに住んでいる。なぜかよく、私がロンドンやベルリンやパリにいると兄弟揃ってたまたま滞在しており、旅先で毎度バカみたいに酒を飲みまくり「またね!」と言って、また各地で然るべきタイミングで再会する。私にとってこの全く利害関係のない人間関係が本当に心地よいし有難い。

そんな井上兄弟は、ペルー生産でアルパカのニットを作っている。アンデスの標高4,000mの牧地で自らアルパカの毛を刈り、地元の人たちと向き合ってプロダクトアウトする、スノーピークのフィールドワークととても近いものづくり精神を持っている。いちばん尊敬する点は、貧しいペルーの人たちの労働賃金を上げるために然るべき工賃で仕事を依頼し、ペルーの人たちのためにアルパカニットを作っているところ。

「生産先ではなく同じ人間として、人としてアンデスの人たちと付き合っている。対等に対価を払わない先進国の意識を変えなければいけない」

ペルーは元々スペイン領で、現在もスペインからの仕事をメインにかなりの低賃金で仕事を請け負っているそう。

論ずるだけで行動しない人たちばかりの世の中で、感じたことを正しい感受性で実際に行動に移す井上兄弟を、本当に尊敬している。彼らが昨年出版した『僕たちはファッションの力で世界を変える』(PHP研究所)という本があるが、本当に井上兄弟なら世界を変えることができると思う。

標高4,000mの過酷な環境で生きているピュアアルパカの生まれ持った自然の機能を肌で感じてもらいたいし、そんな過酷な環境でアルパカと共に生きているペルーの作り手のことも是非思い浮かべて着てもらいたい。

人間らしく服をつくる人たち
人間らしく服をつくる人たち
人間らしく服をつくる人たち
世界一人間味のある大好きな井上兄弟と今年8月に行った、スウェーデンでのサバイバル・キャンプ。
山井梨沙(Snow Peak Apprelデザイナー)
やまい・りさ/創立者の祖父・幸雄、現代表取締役の父・太から代々続く「スノーピーク」の3世代目。幼いころからキャンプや釣りなどのアウトドアに触れて育つ。2014年の秋冬にアパレル事業を立ち上げ、スノーピークが培ってきた“ないものはつくるDNA”を受け継いだものづくりを次世代のフィルターを通し発信。現在はプロダクト全般の統括のほか、「LOCAL WEAR」プロジェクトなど、新たな試みも率先して牽引している。